こんにちは。レポーターのヤマシタです。
さて、いよいよ迎えた決勝レース。
すっきりとした青空が広がる快晴で、レースはスタートから10分遅れだったものの、岸本選手は午前8時39分にスタート!
チームスタッフや他の日本人エントラントがライブタイミングを見守るなか、セクター1では1分59秒699、セクター2を2分35秒970、と順当にタイムを重ねていきます。
サーキットレースと違い、行ったきりになる登山レースですから、チームスタッフが岸本選手の無事を知ることができるのはこのライブタイミングでセクタータイムが表示されたときだけ。
タイムを刻むことで、今しっかりと走っている、ということを確認できるわけです。
好タイムを叩き出していることはもちろんですが、なにせひとつのミスが致命的になる公道レースでもありますから、タイムが表示されるとスタッフは彼の無事を確認することができ、ひとつホッとするわけです。
とりわけ、メインメカニックであり妻でもあるアッコさんの心中は、穏やかではなかったはずです。
そしてセクター3、3分8秒422というタイムが表示されるとライブタイミングを見守っているチームスタッフはもちろん、他のチームからも「おおっ!」という声がもれます。
出走順がは14番目だった岸本選手ですが、セクター3のタイムはこの段階で二輪総合でも2位という好タイム!
そして、いよいよ最後のセクター、つまりゴールまであと少し……。
ライブタイミングを見守る一同が固唾を飲みながら画面を見守ることおよそ3分後!
セクター4・3分14秒750、トータルタイム・10分58秒851のタイムが表示され、岸本選手が無事にゴールしたことがわかると、「おおおおおっ!」と、歓喜と感嘆がいりまじったどよめきが広がりました。
大排気量車を押しのけて1位のタイムを叩き出してのゴールですから、まわりも驚きを隠せません。
レースはその後も続いていき、トップカテゴリーのクラスが次々とゴールしていくと総合順位は下がっていきますが、それでも10分58秒851のタイムはすばらしく、じわじわと下がっていくのみでしっかりと上位に残っています。
そしてすべてのレースが終了した段階でのリザルトは、四輪も含めた総合でも29位、二輪総合では13位というすばらしい成績での勝利となりました。
すべてのレースが終わったのは17時すぎ。
ゴールの山頂からパレードランしながらエントラントたちが下りてきて、二輪クラスの最後尾に岸本選手を発見!
駆け寄ったチームスタッフとしっかりとハグをする岸本選手の表情からもそのうれしさが伝わってきます。
さて、岸本選手に決勝レースの話を聞いてみましょう。
「2秒だけとはいえ、目標だった10分台にのせられたことはとてもうれしいです。強敵のライバルを抑えてのクラス優勝もやっぱりうれしいですね!」
マシンの性能だけでみれば、2位に入ったオハイオ大学チームのほうが上。しかも岸本選手もモーターの発熱問題を抱えたままのレースでした。
「セクター2を過ぎたところでモーターに制御がかかって、最大出力の50%くらいまでパワーが落ちてしまいました。そこからは全力で走ることができてなかったですし、ミスもあった。結果には満足していますが、走りの内容は決して満足できるものではないですね」
勝利の余韻にひたるだけでなく、早くもレースの反省点について言及する岸本選手ですが、高性能マシンのライバルに対して、決してあきらめることなくベストを尽くしてきた結果の粘り勝ちといえるでしょう。
今回の勝因は、156あるコーナーに対して、NSF250Rベースの軽量コンパクトな車体であったことで、大排気量マシンと比べてもコーナリングスピードが上回っていたことが挙げられるでしょう。また、コーナリングの立ち上がりでも、低回転域から最大トルクを発揮する電動マシンならではの特性が、パイクスピークというコースではアドバンテージになっていたと考えられます。
それは昨年、MVアグスタ・F800で参戦した伊丹孝裕選手のタイムが10分58秒580と、岸本選手とコンマ3秒差というところからも明らかでしょう。最大出力でみてもほぼ倍近い差があるにもかかわらずタイム差がこれだけということは、パイクスピークの数多いコーナーに対しては車体の軽さが重要といえそうです。
また、ライバルのオハイオ大学に対して14秒のアドバンテージをつけて勝利した背景には、オハイオ大学チームのマシンもバッテリーに問題を抱えていたこともありますが、やはり車体の軽さによるコーナリングスピードが有利に働いたものと考えられそうです。
いずれにしても、それらを支えたのは岸本選手の粘り強い努力とマシンコントロールの正確さがなければ成り立たず、「10分台」「クラス優勝」という目標を達成しての勝利は見事のひと言に尽きます。
「韋駄天ZEROの実力は証明されましたが、まだまだ改良の余地はありますし、これからも高性能化を目指していきます」
8月下旬にはマンクスGP(こちらはエンジンバイクでの参戦)、そして来年はマン島TT参戦も視野に入れている岸本選手ですが、来年のパイクスピーク参戦にも意欲を見せています。
今後もチーム未来と岸本ヨシヒロ選手の活動からは目を離せませんね!
最後になりますが、記者としてもひと言いわずにいられません。
岸本さん、やったね。おめでとう!
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